第9日(7月1日):ガリシア語研修始まる

滞在第9日の7月1日金曜日。いよいよ、今回の滞在中の一番大きなミッション、ガリシア語研修が始まった。Real Academia Galegaがサンティアゴ大のInstitute da Lingua Galegaと共同で行う「外国人」向けの3週間の研修だ。今日は午前中に受付と開講式があって、午後はクラス分けテストがある。全くの初心者OK、しかもスペイン語知識も問わないというのだから心配は要らないはずだけど、やはり微妙に緊張感がある。

 

サンティアゴの旧市街の外周道路のすぐ外、巡礼路のそばにあるMuseo do Pobo Galego近くの下宿から15分ほど歩いて朝10時少し前に旧市街のInstitute da Lingua Galegaのオフィスへ向かう。入り口にかかっているプレートを見ると、1863年から2年間、ここは詩人のロサリア・デ・カストロと夫のマヌエル・ムルギアが所有していたものらしい。

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中に入ると既に結構な人たちが受付を待っていて、そのうちの若い女性が声をかけてきた。サベラだ。

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サベラは私のパンデイレタの先生、シュルショがマドリードで教えているクラスの生徒で、私とはSNSでは以前からつながっているが会うのは初めて。

 

実は、彼女のことは警戒していた。というのも、半年くらい前にSNSでつながったばかりの頃、彼女から「私はあなたがSNSにアップしたビデオで歌を覚えている。他に〇〇の曲のは持っていないか?XXの曲のは持っていないか?持っていたら送ってくれ。」といきなりメッセージをもらい、面食らったのだ。話したこともないのにこんなに要求してくるって、いくら勉強熱心だといっても失礼じゃないか?と。

 

そんな気持ちが、サベラと実際に会って吹っ飛んだ。とんでもなく親切で楽しい。そしてガリシア語でよう喋る。やっぱり会ってみないとわからないもんだ。彼女はア・コルーニャ生まれで両親はルーゴ県の人。小さいうちに家族でマドリードに引っ越して今もマドリードに住んでいる。でも、ガリシア人家族もマドリードへ行けばマドリードの雰囲気になるのかな、ガリシア人より遠慮なしに人にものを要求してくるし遠慮なしに何かしてあげる、といった感じがする。サベラと一緒に来たのがパロマパロマの両親はルーゴ県出身で、彼女は研修には2回目の参加だそうだ。マドリードからガリシア語の研修に来た2人がガリシア語で話しているってなんだか不思議な感じ。サベラはパロマにも私にもガリシア語で話すことを要求し、私の超下手なガリシア語を忍耐強くいちいち直してくれ、派生語だの、諺まで教えてくれるから、まるで第二の先生だ。初日から私の頭は彼女が教えてくれたことで破裂しそうだけど、この期間の間にガリシア語は上手くなるはず。ありがたい。

受講生に配布されたセット。ロゴの入ったバッチやフォルダなどで気分が上がる(教科書はクラスが決まってから)

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受付の次は開講式。その中で日本でこの秋からガリシア語研修が始まることも公になった。そう、そうなのです。東京でガリシア語が学べるようになるんです。すごいなあ。Real Academia GalegaのpresidenteのXesús Alonso Montero氏はとってもチャーミングでエレガントな人。硬い挨拶が多い開講式の中で、冗談を散りばめて参加者を笑わせながら自分のことを自分の言葉で話す、そんな印象だった。直接お話ししてみたら、やはりとても素敵な紳士だった。

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話が半分しかわからないのに、なんだか開講式で感激してうるっとしまった。このあいだも電車でア・コルーニャからサンティアゴに移動する途中、車窓の風景を見ながら、木を見ればどこに川が流れているかなんとなくわかるようになったなあと思ったらうるっとした。こうした気持ちがどこから来るのか未だによくわからない。どこぞの神様なのかご先祖様なのかが私を使って何かしようとしている、そんな風に感じるのだ。簡単ではないけれど、さして苦労していない。会うべき人にしかるべきときに会うし、ガリシア語もスペイン語もさして話せないしパンデイレタだってまだ下手なのに、テレビに出してもらったり、なんだかものおじせずに偉い人と話したり何か頼んだりできる。

 

シュルショに会ってからは特にそうなのだ。彼のおかげでいろんな人たちとも知り合えたし、たまたまだけど彼の生徒のサベラが今日からのガリシア語研修中私を助けてくれる。そして日本のガリシア語研究の第一人者の浅香先生とも知り合った。なんだか話ができすぎている。頑張って勉強しなくちゃね。私がこれからやるべきことのためにも、そして4ヶ国語(日本語、英語、スペイン語ガリシア語)で混乱している私の頭を少しでも楽にするためにも。

 

午後はテスト。初心者でもレベル分けテストは受けるが、ちんぷんかんぷんすぎて途中で眠くなる。どう頑張ってもこれ以上はわからないと思ったのでいくつか未回答のまま終了。私より後まで残っていた人も多いから、結構、全くの初心者も多いのかもしれない。日本にいる間にもう少しちゃんと勉強していれば、せめて名詞の複数形と女性形と動詞の過去形くらいは完璧に回答できたのになあと反省。テストは心を入れ替えるために存在する(笑)

 

今日の研修の終了後、サベラとともに旧市街のお店を探索。ハンドメイド好きな女子にはたまらないアクセサリーや服飾雑貨と伝統音楽のグッズ、民族衣装もあるDe Cotioとか、大好きなイラストレータLeandro Lamasのレザーグッズを置いているMedialuaとか。なぜだか、日本人の私がマドリード育ちのガリシア人にサンティアゴを案内してるって不思議。サベラが、私が連れて行く店々で喜んでくれるので嬉しい。

 

途中、先生の1人に会った。もうテストの結果が出たらしい。サベラは最上級クラス、ブラボー!私は一番下ではなくelemental2のクラスになったらしい。良かった。全く何の知識もない状態の人たちと一緒に始めるのでは飽きるし、かといって間違って中級のクラスに入ったらついていけない。

 

夜8時に「おやつ」をスウィーツのお店Cafe iacobusで取る。ここは先生のお勧めだったんだけど、私にはちと大味に感じる。スペインらしいずっしりと甘いのが好きな人向き。

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サベラが朝食を食べる、午前のおやつを食べる、昼食をとる、午後のおやつを食べる、夕食を食べる、それぞれ別の動詞があると教えてくれた。恐れ入りやした。ちなみに「お昼ご飯を食べる」はガリシア語ではシャンタールxantarという動詞を使う。何度来ても、スペインの時間とごはんの感覚はよくわからない。

 

土日の予定はなし。たまっている作業もあるので、家を中心に静かに過ごそうと思う。